あるものの(自然物に限らず)名前を確定させる作業を「同定」というのだそうです。
『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか?:生きものの”同定”でつまずく理由を考えてみる』
須黒辰巳・著 ベレ出版
おお~、「この虫何ていうのかな?」とか言って図鑑をめくったりするアレは、同定っていうのか。
なんかカッコイイじゃないか。
我が家も息子が小さい頃は、公園や旅行先で虫を捕まえては「同定」とやらを楽しんだものです。
そして、いくら図鑑と見比べても、「これ!」っていう確信が持てないこともまた多かった。
ですから、図書館の新着案内でこの本のタイトルを目にした時は興奮しました。
著者の須黒さんは、現役の小学校理科教諭。
生きもの好きにもタイプがあるのだと、須黒先生は言います。
形が好き、捕まえるのが好き、食べるのが好き、作品にするのが好き。
先生は、とにかく出会った生きものの名前を知りたい派。
無類の同定好きなのだそうです。
そんな須黒先生が、同定するとき頭の中では何をしているのかを言葉にしてみようと試みて書いたのがこの本。
先生が実際に行った、シダやガの同定作業がリポートされるのですが、まるで自分も一緒に作業をやっているかのような臨場感です。
そんな同定体験を通して、同定の上達法を学び、同時にこれまで図鑑を見ても見分けられなかったいくつかの理由を知ることができるという寸法。
平易な言葉で綴られた、読みやすくユーモアたっぷりの文章。
眠くならない理科の授業を受けているかのようでした。
須黒先生に理科習いたかった!
同定の手順はもちろんのこと、同定の魅力、なぜ名前を知ることは楽しいのかが語られているのも素敵です。
だいぶ端折りますが、こんな感じ。
「世界の方が何一つ変わらずとも、名前を知ることで自分にとっての世界は豊かなものに変わる。」
この感性をこそ、見習いたい。(実際は、もっと繊細で豊かな言葉で表現されております。)
図鑑で調べたけどよくわからなかったという経験のある、私みたいな方。
老後の趣味に、図鑑片手に山歩きなんてよいかもと考えておられる方。
はたまた、お子さんを理科好きに育てたいわなんて目論むお母さん。
などなど、自然観察に何らかの興味がある方全てに、力一杯オススメしたいです。
さて、今現在図鑑を見れば名前がわかる気満々になっている単細胞の私ですが、学んだことを実践できるかどうかはまた別の話。
(必ず名前がわかるようになるとは、本には一切書いてありません。)
近々、久しく使っていなかったポケット図鑑を引っ張り出して、ぜひとも力試ししたいものです。
楽しみ♪