図書館の貸し出し予約91人待ちで、ようやく手元にやってきた作品。
『ザリガニの鳴くところ』
ディーリア・オーエンズ・著 友廣純・訳
早川書房(2020年)
一日で一気読みでした。
ノース・カロライナ州の湿地の小屋で、幼い頃からたった一人で生きねばならなかった少女カイアの物語。
カイアが6歳のときに、父親の暴力から逃れるために母と兄弟たちが家を出ていきます。
その父もカイアが10歳の冬に家を出ていき、二度と戻ることはありませんでした。
物語は、1952年・6歳からのカイアの成長と、1969年に湿地で起こった殺人事件の捜査、この二つの話が交互に描かれつつ進みます。
そして、カイアの成長が事件が起こった年に追いついたとき、二つの話が一つに収れんし・・・ここまで来ると、もう読むのをやめられない!
思いもよらない結末まで、突っ走りました。
疲れた・・・でも、面白かった。
貧困や身分差別に苦しみながらも、湿地で生き抜くカイアのたくましさ。
誰かのぬくもりを欲する心と、孤独に閉じこもる心。
女性として、どうしようもなく異性を求める気持ち。
69歳にして初めて執筆したという小説で、よくぞこの魅力的な主人公を生み出してくれた!と思います。
著者はもともと動物学者で、研究論文やノンフィクションは発表していたとのこと。
その上、500ページを一気に読ませる小説までモノにするとは。
さらに、湿地の自然描写がまた、読み応えあるんです。
湿地の保全活動もしているという著者ならではの、繊細さと迫力。
湿地で暮らしていることが、カイアの孤独や、受ける差別の原因ではあるのです。
ただ、その自然に包まれることでカイアの心が守られ、癒されてもいる。
そんな風に感じられる自然の描かれ方が、素敵でした。
著者は、これからも小説の執筆を続けるつもりだそうです。
また、本作は映画化もされていて、アメリカでは今年の7月公開予定とか。
次の作品も読みたいし、映画が日本で公開されたらぜひ観に行きたいです♪